2019-03-16

【秘訣】構造計算された家を。「耐震等級3」を勧める理由。


ゆうです。

エスネルデザインの建てる家は「構造計算」を行います。

そして耐震性は「耐震等級3」をお勧めしています。

なぜ構造計算が必要なのか。

なぜ耐震等級1ではダメなのか。

まとめました。





結論から書きます。



なぜ「構造計算」を行うのか。

・カンや経験ではなく、計算により裏づけされた安全を提供するため。

・より耐震性の高い家を設計するため。

・合理的な構造とすることで不要にかかるコストを省くため。



................



なぜ「耐震等級3」を勧めるのか。

・震度7の地震が起きたときに、建物が損傷するリスクを出来る限り低くするため。

・損傷によって生じる修復コストを出来る限り少なくするため。

・耐震等級の向上はそこまで大きなコストはかからないため。



................



詳しく解説していきます。


まず、


「構造計算をするっていうけど、家ってみんな構造計算されているんじゃないの?」


と思われると思います。


率直に答えると、

全ての家が構造計算されているわけではありません。

むしろ、大半の家が構造計算されていません。



建築基準法には「構造計算」の義務はありません。

あるのは、簡単な「検定」の義務があるだけです。
(壁量の確認、四分割法の検定、N値計算のみ)

そして現在、一般的な住宅はその検定ですら役所への提出を省略して良いことになっています。
(「四号特例」※諸条件あり)

なので、構造計算されていない家は、建物の安全性が十分に満たされているか非常に不透明です。

また、簡易な検定には雪の重さが考慮されていません。

梁や柱の大きさも計算で求めるわけではなく「経験則」で決められているのが現状です。


まとめると、

「構造計算をしない簡易な検定では建物の耐震性や強度が不十分なことがある。」




そのため、エスネルデザインでは全棟、設計者である私が構造計算を行います。

構造計算を他の業者に依頼することもありません。
設計者である私が、間取りと構造を同時に検討します。
(→構造的に合理的な間取りが出来る
 →無理がない間取りは地震時に被害が生じにくい)

設計事務所の仕事『ラフプラン検討。』間取りと構造。


また、より耐震性の高い家を設計するためには構造計算が必要になります。

簡易な検定では最低基準の「耐震等級1」までしか検討できません。

「耐震等級3」の家を設計するためには構造計算が必要になります。


また、構造計算を行うことで不要にかかるコストを省くことが出来ます。

梁など最適な大きさを計算により算出することで、過剰に大きな材を使用することを避けることが出来ます。



これらが構造計算を行う理由です。

自分が家を建てるなら、安全性が計算により確かめられた家が欲しいものです。

(当たり前のことですが、当たり前に行われていないのが建築業界です。)

もし家を建てるならば「構造計算された家」を建ててください。


※一般的な住宅の構造計算は「許容応力度計算」と呼ばれています。
家づくりを検討中の方は担当者さんに「許容応力度計算はされますか?」と聞いてみるとよいと思います。


中越沖地震で被害を受けた建物(2007)。





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続いて、なぜ「耐震等級3」を勧めるのか。


まず「耐震等級」ですが、等級1、2、3が定められていて、等級3が最高レベルです。

構造計算されず簡易な検定で建てられた家は「耐震等級1」です。

それぞれの等級の詳細はこちらをご参照ください。

豊かな暮らしのつくり方。10-3 ー『耐震等級とは。』ー


建築基準法で定められた最低限の基準が耐震等級1です。

では、最低限の「耐震等級1」とは地震に対してどれほど耐えられるのでしょうか。

観測史上初めて震度7が2回起こった熊本地震の被害統計を基に話を進めていきます。

「くまもと型住宅生産者連合会 耐震等級3のススメ」より



国がまとめた熊本地震における建築物被害の統計がこちら。

資料はこちらより。(加筆あり)



熊本地震を受けた住宅(2000年以降の現在の耐震基準で建てられた住宅)のうち、

無被害は約55%

被害ありは約45%

でした。

被害ありのうち約7%は大破・倒壊・崩壊となっています。


ちょっとビックリしませんか?


建築基準法の規定(耐震等級1)で建てた家でも4割以上が被害を受ける。

そのうち約7%は住めないレベルの大きな被害を受ける。

この結果を見て「耐震等級1で足りる」と感じますでしょうか。

※細かく言うとグラフの242棟には耐震等級2や3の家も含まれているため、
それらを除き、耐震等級1の家のみでみれば、被害ありの割合はもっと高まる。




これには理由があり、

建築基準法の規定(耐震等級1)では、震度7は想定外なんです。
(耐震等級1は「震度6強程度の地震に対して倒壊しないこと」を想定している。)

地震は確率の問題であり、法律の基準はあくまで最低限だからです。

なので、熊本地震のように震度7の地震が2回も来た場合、耐震等級1では大破・倒壊・崩壊
する家が出てきています。

(築数十年の家でなく「新築の家」で倒壊・崩壊ですよ!)

※大破・倒壊・崩壊した建物は「正しい設計・施工がなされていなかった可能性」があるため一概には言い切れない。
(調査資料には「倒壊した7棟のうち3棟は施工に問題があり、1棟は敷地の崩壊が原因」とされている。)



そして、さらに恐ろしいのは

被害があった場合、次の地震に同じように耐えられるかは分かりません。

耐震要素が損傷している場合、次の地震では倒壊するかもしれません。


「家は1回しか地震に耐えられないの?」

と考えさせられると思います。



【まとめ】

・耐震等級1は震度7は想定していない。

震度7の地震を受け、耐震等級1の家の4割以上で被害が出た。

・被害があった場合、次の地震に耐えられるかは分からない。



................



では、
耐震等級はどれほどなら良いのでしょうか。

「くまもと型住宅生産者連合会 耐震等級3のススメ」より


先ほどのグラフと上の表を比べてみます。

現在の耐震基準(耐震等級1・2・3全て含む)で建てられた家は

無被害は約55%

被害ありは約45%

でしたが、

そのうち「耐震等級3」の家だけ見ると、

無被害は約87%

被害ありは約13%
(軽微・小破。※大破・倒壊は無し)

でした。


地盤の特性、地震力の大きさ、間取り、耐力壁の配置、など諸条件が個別のため、言い切ることは出来ませんが、おおむね
耐震等級3であれば、震度7に対して被害を最小限に留められると言える思います。


そして、無被害であれば耐震性は劣化しないということ。
(同程度の地震であれば次の地震にも耐えられるということ。)


また、無被害であれば修復コストがかからないということ。

(逆に、被害があれば修復コストがかかる。
僕の妻の実家は中越沖地震で全壊し、多大な修復コストがかかった。)




................


これらの理由からエスネルデザインでは耐震等級3をお勧めしています。
(積雪量が大きい地域などは要相談)

付け加えれば、
耐震等級1から耐震等級3に性能アップするのにそこまで大きなコストはかかりません。
(必要な耐力壁量が増えるため間取りの制約は増す)
(設計者に知識とスキルがあれば)

だからこそ「耐震等級3が標準」という考え方が広まれば良いと思っています。

それは被災を未然に防ぐ「減災」につながります。

また、耐震等級を高めることで資産価値が高まり、数十年後値下がりせずに家を売ることが出来れば資産を手元に残すことができ、建物(資源)の有効活用にもつながります。



................


本当はここに書いたような情報を全ての家づくりのプロが正確にお客様に説明することが理想です。

しかし、全てのプロが説明できるわけではありません。


一生で一度の初めての家づくり。

これから家を建てられる方は「なにが大切なのか」を見落とさないために「自分で勉強すること」も求められます。


「家づくり」は「家族の人生づくり」。


よく考え、調べ、良い設計者と出会えることを祈っております。


-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-




【補足情報】................

「近年発生した震度6以上の地震」

1995年「阪神淡路大震災」 震度7
2000年「鳥取県西部地震」 震度6強
2001年「芸予地震」    震度6弱
2003年「十勝沖地震」   震度6弱
2004年「新潟県中越地震」 震度7
2005年「福岡県西方沖地震」震度6弱
2007年「能登半島地震」  震度6強
2007年「新潟県中越沖地震」震度6強
2008年「岩手宮城内陸地震」震度6強
2011年「東日本大震災」  震度7
2011年「静岡県東部地震」 震度6強
2016年「熊本地震」    震度7
2016年「内浦湾地震」   震度6弱
2016年「鳥取県中部地震」 震度6弱
2016年「茨城県北部地震」 震度6弱
2018年「大阪府北部地震」 震度6弱
2018年「北海道胆振東部地震」震度7
2019年「熊本県熊本地方地震」震度6弱
2019年「胆振地方東部地震」震度6弱
................................


出典:全国地震動予測地図2018年版 地図編


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