2017-11-30

S邸リノベーション。13「インスペクション実行『室内④小屋裏』。」


ゆうです。

S邸リノベーションのインスペクション報告の続きです。

 前回のブログ→S邸リノベーション。12「インスペクション実行『室内③床下』。」


今回は「小屋裏」の報告です。




前回、床の傾きの原因を突き止め、問題がないことを確認しました。

床下(基礎)の次に重要なのが、今回の「小屋裏」です。

(小屋裏とは俗に言う「屋根裏」のことです。)



―――――

【小屋裏】


小屋裏の構造材の部材や接合部に特に問題となるところはなく、屋根面にも濡れ跡は確認できない。
野地板(≒屋根の下地材)は、合板ではなく荒板が使われていた。

構造材もしっかり乾燥している。(含水率13%ほど)
→濡れ跡なしと併せて、雨漏りは起きていないと考えられる。

屋根の先端に光が見える。
→外とつながる隙間がある→小屋裏の換気がとられている→○

小屋裏にも断熱材は施工されていた。→○
断熱材はグラスウールで厚10cmほど。

材どうしは「かすがい」と呼ばれる大きなホチキスのような金物で接合されている。
(従来の方法で問題なし)

断熱材はあったが、施工は荒めで隙間はある→△
もちろん気密シートなどなく気密施工はなされていない。

一部にネズミのフンがあった。
築年数の経った家の小屋裏にはよくあること。
室内空気と混ざる空間ではないため、大きな問題はない。

梁と梁どうしは羽子板ボルトと呼ばれる金物で接合されている。(一般的な方法)





小屋裏の調査を終えて。

断熱材の施工の荒さなどはありましたが、

雨漏りなどは見受けられませんでした。

→基礎が問題なかったことと併せて、リノベーションの検討ができる土台に乗ったと言えます。


ホッと肩をなでおろします。


もちろんこれは「最低限の問題がなかった」というだけで、

十分かどうかはまた別の次元の話になります。



例えば、


耐震性を計算して確認したわけではありません。
 (むしろ、耐震性は必要量に足りていないと思われます。)


断熱気密性は足りていません。
 (施工が荒い。気密処理はされていない。)



これらを設計者が考慮して、計算・設計しなおし、

住まい手にとって、どこまで直すのか(どこまで求めてるのか)を確認しながら、
予算とのバランスをとりながら、リノベーション計画を立てていくことになります。




ざっくりですが僕は、

2000年以前に建てられた住宅は、なにかしらの手直しをしたほうが良いと考えています。

それは、2000年に建築基準法が改正され住宅を建てる際の基準が高くなったからです。


変わった基準は、


地盤調査が事実上義務化になった。
 (しかし、全てが地盤調査しているわけではない。実質的に義務化になったのは瑕疵担保履行法が施行された2009年から。)


・筋交いなど耐力壁の接合金物が義務化になった。
 (金物がないと所定の耐震性が発揮されない。)


・耐力壁の配置バランスの計算が必要となった。
 (耐力壁のバランスが悪いと所定の耐震性が発揮されない。) 


これらの必要性は、熊本地震などでも明らかになっています。

2000年以前に建てられた住宅はこれらの施工がなされていない可能性が高いです。



そして、2000年以降、徐々に断熱性や気密性の重要性が浸透し始め、年々性能は良くなってきました。




僕は、支出を抑えるために中古住宅を買ってそのまま住むことも悪くはないと思いますが、

最低限、現在の耐震性や断熱性気密性の最低レベルまで持っていくためのリノベーションはしておいて損はないと思っています。



それは、性能を満たさない家だと、


・地震が来た際に、その直後に自分の家に住むことが出来なくなったり、家を直すのに大きな費用や長い年月を費やすことが必要になってしまう。


・断熱気密性の悪い家は、光熱費の無駄が大きく、また快適性も悪く、冬場の行動が制限されたり、健康寿命に影響を与えたりする可能性がある。



これらは、まさに僕が今住んでいる家から学んだことです。
(築35年ほど。旧耐震基準)


僕の家(相方の実家)は、中越沖地震で被災し、全壊判定を受けました。

その後、耐震改修をして再び住めるようになるまでに約1年ほどかかりました。

その間はずっと仮設住宅です。

冬場はとても寒く、家族の健康も害されました。

もちろん家を直すのに大きな費用もかかりました。


また、断熱改修はまだ完全になされていません。

僕を含め家族は、冬場の寒さに耐えながら暮らしています。


そんな経験があるため、僕は最低限の断熱・耐震リノベーションは必須と考えています。




もちろん、リノベーションの費用がかかりすぎて

「新築住宅を建てたほうが安いじゃん!」

となってしまっては本末転倒です。


そうならないよう、新築を建てる費用の6~7割程度の金額でリノベーションが済むかどうか。

それを見極めるために、リノベーションに精通した設計士が必要で、

その判断のためにも中古住宅のインスペクションは必須と考えています。







―――――

長くなってしまいました。


ここまでが、建物の「重度の問題」に関するインスペクションでした。

(大きく「基礎」「雨漏り」「傾き」など。)


次回は、設備や戸など「軽度の問題」に関するインスペクションをまとめようと思います。

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