2017-11-15

S邸リノベーション。12「インスペクション実行『室内③床下』。」


ゆうです。

S邸リノベーションのインスペクション報告の続きです。

 前回のブログ→S邸リノベーション。11「インスペクション実行『室内②床』。」



今回は「床下」の報告です。

前回、1階の床壁に高低差5cm以上の傾きがあることが明らかになりました。

はたして原因はなんなのか。

それを探るべく床下の調査へと進みました。



床下のインスペクションのポイントは大きく、


①構造材(木材)に腐朽、シロアリ被害はないか

②基礎が適切に配置してあるか

③基礎にヒビなどの不具合がないか

④配管等の劣化具合は問題ないか

⑤床下断熱材の施工は適切か

⑥床下の防湿措置は適切か

⑦筋交い金物の施工は適切か

などが上げられます。




現在、床の傾きから「地盤の沈下」の可能性が疑われている状況でした。

その確認は、「③基礎にヒビなどの不具合がないか」から判断します。


もし、地盤沈下があれば、

「地盤沈下→基礎が傾く→床が傾く」という流れが起きており、

その過程で、「家の重さに偏りが出て基礎のどこかにヒビが発生する」からです。


どうだったのでしょうか!?


家の床下へは床下点検口から。
床下収納(写真左の白い箱)としても使われるためキッチンにあることが多い。

床下はクモの巣やほこりや湿気にまみれていることが多い。
そんなときに役に立つのがこの全身不織布スーツ!+マスク+手袋。
点検後に物件を汚さないためにも役に立つ。



―――――

【床下】

①構造材(木材)に腐朽、シロアリ被害はないか
土台、大引、根太(写真の木部)には、シロアリ被害や腐食は見られなかった。→○
構造材は十分に乾燥していた(含水率は別の写真による)→○

⑤床下断熱材の施工は適切か
床下断熱材が施工されていることが確認できた。(厚さ60mmほどで少ない→△)
断熱材は比較的きれいに密実に施工されていた。→○

脱衣室と浴室の間の土台に水が流れた跡があった。
現時点では腐朽は進んでいないがこのまま使用するには補修の必要がある。→△

⑥床下の防湿措置は適切か
床下の防湿措置は防湿シートをそれなりにひいただけだった。(施工は荒め→△)
ところどころめくれているところもある。
シートをめくり下の地面を確認すると、砂地だが湿り気があった。
地下水位は高いと思われる。(←液状化マップで確認したとおり)

しかし、構造材が問題なく乾燥しているのでリスクは少ないと思われる。
(床下通気が効果を発揮している。→○)

⑦筋交い金物の施工は適切か
土台の上に筋交いが施工されているのが確認できた。
しかし、適切な金物は施工されておらず、地震時に耐力を十分に発揮できない。→×

火打ち(斜めの部材)の色が濃く染みているように見えるのは防腐剤を塗布しているため。(問題なし)

土台の上(外周部の壁)に断熱材(グラスウール)が施工されていることも確認できた。

配管を通すために土台が欠かれていた。
構造耐力上適切な施工方法ではなく、必要に応じた補強が必要になる。→×

また、土台火打ち(落下している木材)が外れていた。
配管を施工する際に外したと思われる。→×

和室の床下。和室の床裏には断熱材は施工されていなかった。→×

土台は防腐剤注入材。土台と基礎の間には通気パッキンが施工されていた。→○
基礎はとてもきれいでヒビはない。→○





そして、傾きのあった問題の1階リビングの真下へ、、、



1階リビングの床を支える束が束石から浮いていた!(約15mm)
施工不良。床を歩いたときのたわみの原因と考えられる。→×

(一瞬、地盤沈下を想像したが、重さが乗っていない束石が沈むことは通常考えられない。)

床束の根元が染みているように見えるが、これは防腐剤が塗布されているため。
含水計で測定すると含水率は18%ほど。
構造材の要求乾燥レベルである20%以下のため問題なし。

④配管等の劣化具合は問題ないか
給水管は鉄管ではなく、可とう管(自由に曲げることができる管)であることが確認された。(断熱材が巻かれている)
ポリエチレンのような素材であれば、鉄管のようにサビや腐食の心配が少ない。→○

配水管も塩ビ管が使用されていた。
(劣化具合の詳細な調査は未確認。)





そして、問題の基礎の状態は、、、


③基礎にヒビなどの不具合がないか
基礎表面の状態は良好で、家全体を通して目立ったヒビ割れ等の問題は見られなかった!→◎

築20年以上でも健全な基礎。
リノベーションする価値のある物件かどうかの第一関門クリア。
これなら前向きにリノベーションを考えることができる。




では床の傾きはなぜ??




この日は明確な判断ができなかったため、
(僕が床下の奥までに入れなかったため納得できなかった。)

インスペクションの後日、齋藤建築設計の齋藤さんと再度現場に訪れ、床下の傾きについて再調査を行いました。
(最初の不織布スーツの写真は後日のもの。この日は奥まで入り、全てを確認し原因を突き止めた。)

齋藤大工さんと共に床下を調査する。



そして、原因を突き止めました。


原因は僕の想像を超えたとても単純なものでした。


左側の材が「土台」。右側の材が「大引」。大引の上に乗っている材が「根太」
根太の上に床材が敷かれている。


床が傾いていた原因は、写真の赤丸の部分の取り付け高さを間違っていたからでした。

左端は「土台上端+20mm」。右端は「土台上端+50mm」と言った具合に、、、

床下地の取り付けミスがそのまま床の傾きにつながっていたという、、、
(初歩の初歩のミス)



実はこの可能性は先日のインスペクションの際にも指摘されていたものでした。

アズ建築の佐藤さんいわく、


「基礎にヒビがなく健全なため、地盤沈下の可能性は低い。」


「だとすれば、床の下地の取り付けミスによるものだと思われる。」


という報告でした。



しかし、僕は半分納得しながらも半分はまだ疑ってました。


「大工さんが5cmも取り付け高さを間違うか??」


「プロなら歩いた瞬間に傾いていることがわかる。これをそのまま気づかずに完成させるなんてことはあり得るのか??」


と。



そのため、

「大工さんによるセカンドオピニオンとしての再調査」と、

「僕自身が床下に入り調査し、自分の目で見て確認する」

ことの必要性を感じたのでした。




そして、再度調査をしてみれば、

アズ建築さんの言ったとおり、床下地の取り付けミス。


齋藤建築さんいわく、


「昔の建物にはよくあることです。
 建売建設ラッシュとかで若い大工が担当していたり突貫工事だったりして、下地材の取り付けを間違っている物件はよく見ます。」


とのこと。




後日、この物件のオーナーさんに確認を取ったところ、


「床が傾いていることには気づいていなかった。

 おそらく、新築当初からそうなっていたんだと思う。」

という話でした。



大工さんの中にも、ピンキリの技量を持った人がいるということですね。

勉強になりました。

(いままでそういう技量の低い大工さんに会ったことはありませんでした。
 きっと良い会社と良い大工さんに恵まれていたんだと思います。)






さて、右往左往ありましたが問題は解決されました!


地盤沈下の可能性は低い!

床の傾きは単なる施工ミス!
(直せば問題なし、構造的にも問題なし!)



ホッと肩をなでおろしました。

(その場にいたS様いわく、僕がホッとした様子が僕の表情からすぐに感じ取れたそうです。)





―――――

山場を越えましたが、インスペクションはまだまだ続きます。


次回は、基礎の次に重要視される「小屋裏」についてです。

雨漏りがあるかどうかも大きなポイント。

どうだったのでしょうか!?

次回に続きます。

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