2018-02-16
【秘訣】太陽光発電のメリットと「雨漏り・積雪リスク」。
ゆうです^^
先日、新築を考えている友人から
「ZEH(ゼロエネルギーハウス)ってどうなの?」
という質問を受けました。
画像はYKK APさんHPより。
「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」とは簡単に言えば、
・断熱性を高めたりエコ設備を選んだりして、使うエネルギーを減らそう。
・太陽光発電パネルを載せて、エネルギーを自宅で作ろう。
その結果、
「通常使用していたエネルギー以上のエネルギーを削減・創エネできればゼロエネルギー住宅の認定をしますよ。」というもの。
端的に言えば「太陽光パネルを載せること。」がZEHの条件です。
僕は友人に、
「ZEHは積極的には勧めていないね。」
と答えました。
なぜかは追ってお伝えします。
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なぜハウスメーカーはZEHを推しているのか。
いくつか理由があります。
・住宅を売る理由付けをするため。
(新製品が出れば注目を集めますよね。CMもしやすい。)
・補助金が出るため。
(2018年度は70万円ほどの補助金が出る予定です。)
・国が推しているため。
(大手メーカーは国からZEHを推進するよう言われている。)
ではなぜ国は推しているのでしょうか。
・日本のエネルギー自給率向上のため
(日本のエネルギー自給率はたったの6%ほど)
そして、ゆくゆくは、
・日本の輸出できる技術である「蓄電池」を世界に売りたいため。
(日本の蓄電池技術は世界的なシェアがある。電気自動車の普及で需要も拡大している。)
①太陽光発電ブームを作る。
↓
②売電価格を下げる(→自宅で消費するほうがメリットが出る。)
↓
③発電した電気を売らずに「蓄電」し、夜間利用にまわしたほうが経済的になる。
↓
④蓄電池が売れる
↓
⑤蓄電池の製造コストが下がり、日本の蓄電池の国際的な競争力が高まる。
↓
⑥輸出し、外貨を稼ぐ。
というスキームです。
................................
それでは、太陽光発電のメリット・デメリットとは?
【メリット】
・発電時に廃棄物が発生せず、環境負荷が低い。
・屋根に設置できるので設置におけるハードルが低い。
・停電時に非常用の電源として使うことが出来る。
・発電した電力を自宅で使ったり売電したりできるため、投資としての価値がある。
【デメリット】
・発電量が天候によって大きく左右される。
・夜間は発電できない。
・株などの他の投資と比べて流動性がない。故障リスクがある。
※発電した電力の売電価格は年々下がっています。
また、パネルの設置費用も年々下がっています。
投資としての価値があるかは個人で検討してみてください。
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前置きが長くなりました。
僕がなぜ「ZEHを積極的には勧めない。」と言ったのか。
正確に言えば、
「太陽光発電は積極的に勧めない。」
という意味です。
それは、エネルギー自給の観点からでも、投資的な不安からでもありません。
雨漏りリスクが怖いからです。
そして、
積雪・落雪リスクが怖いからです。
屋根に太陽光パネルを設置する場合、
屋根にビスで穴を開けて留めつけます。
もちろん雨が入らないよう防水処理はするのですが、何年持つかは不明。
(シーリングという防水性のあるボンドのようなもの)
(※屋根に穴を開けずに設置する工法もある。)
さらに、新潟には積雪リスクがあります。
パネルの上の積雪は、最悪パネルを壊します。
(一般的な太陽光パネルは耐雪1m)
パネルの上に雪の重みが乗ると、パネルを留めているビスの負担が大きくなるため、想定以上に雨漏りリスクが大きくなるかもしれません。
(もちろん雪が乗っていれば発電はしません。)
そして、落雪リスクがあります。
通常、新潟では落雪しないように軒先に雪止めアングルを設置します。
しかし、雪止めアングルの量が少ないと雪の重さに耐えられず、パネル上に乗った雪が一気に落ちることがあり得ます。
(今年の大雪でそういった事態が発生したという話を聞きました。雪が落ちた先の1階の屋根が壊れてしまったそうです。)
ある家の屋根。雪止めアングルは屋根先端に1列のみ。
積雪量と屋根勾配を考慮すると適正アングル量は3列ほどか。
大雪でアングルに大量の雪が貯まり、バルコニーなどに一気に落下しないことを願う。
逆に、必要量のアングルをつけようとすると、設置できるパネルの量が減ってしまいます。
パネルに雪が乗りっぱなしになるため、雨漏りリスクやパネル破壊リスクも上がります。
また、雪止めアングルを設置せずに「落雪」させるパターンもあります。
その場合、雪が落ちる側に広い庭が必要になりますが、そのような敷地は多くはありません。
また、近年増加している太陽光パネルのリスクに、
「火災」と「風害」があります。
日経ホームビルダー2018.1月号より。
詳しくは上記サイトより購入して頂きたい。
「火災」は、
・パネルが瓦の影になり発電が阻害され電気抵抗が増え、発火。
・雑な施工により漏電し発火。
・雪の重みでパネルと雪止め金物が接触しショートし発火。
「風害」は、
・基準風速以下だったがパネルが飛んだ。
・屋根の谷の部分で部分的に風圧が強まりパネルが飛んだ。
・基準適合外のパネルを使用していた。
・想定風速以上の風が短期的に吹いたためパネルが飛んだ。
2017にはJIS基準の風圧荷重の見直しがあり風圧加重は従来想定していた約2倍に引き上げられました。
これって相当やばい話。
それまでのパネルの耐風圧性能は必要量の1/2しかないと言っているようなもの。
(それだけ風が局所的に強まる可能性があるということ。)
火災も風害も最悪の場合人命に関わる話だ。
確率にもよるが、安全性によりも経済性を優先することは出来ない。
太陽光パネルが一気に普及したのは、売電価格が2倍になった2010年から。
もうすぐ10年が経つ。
屋根のシーリングが劣化し始めるのは5~10年ごろからと言われている。
2020年あたりから太陽光パネルの雨漏り問題は大きく顕在化するかもしれない。
そうなったら発電の売電で儲けるどころではない。
雨漏りは原因位置の特定が難しく対処に大きな費用がかかる。
雨漏り発生の発見も遅れがちで、最悪の場合、気づかないうちに柱が腐りシロアリを呼び寄せることも。
僕が「ZEH(屋根に載せる太陽光発電)を積極的に勧めてはいない。」と言った理由はここにある。
最終的には、建て主がそのリスクを理解し、メリットとリスクを計りにかけた上で太陽光発電を採用するかしないかを決めれば良い。
設計者はその判断の手伝いをする。
起こり得る可能性をできるだけ正確に分かりやすく伝えることが設計者には求められる。
最悪の自体が起きる可能性があることを想定しておくことが後悔のない家づくりをする秘訣だろう。
※もちろん限りあるエネルギーを大切に使うこと、再生可能エネルギーを積極的に利用することは大切。
しかしそれを家の屋根でやる必要があるのか、エネルギー削減効果は大きいのか、リスクと比べてその価値はあるのか、など慎重に、論点を整理して考え決めることが重要。
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