2018-01-18

S邸リノベーション。19「サーモグラフィ調査③『築35年の我が家』。」


サーモグラフィ調査の続きです。

今回は築35年オーバーの我が家での現地調査の報告です^^

築年数の経った低断熱低気密の家のサーモグラフィはどうなっているのでしょうか?



※サーモ画像を見る際には注意が必要です。まずは注意点をお読みください。
 →S邸リノベーション。17「サーモグラフィ調査①『注意点』。」


(雪の重さで電話線が切れて工事中の我が家。築35年以上)




さて、前回はS邸のサーモグラフィ調査をしました。

まずまずの調査ができたのですが、調査条件がいまいちだった点が、

『暖房時間が短い。』こと。と、

『暖房器具が石油ストーブである。』こと。

これらによって、温度が安定するまでの途中の状態での調査となっていました。
 →S邸リノベーション。18「サーモグラフィ調査②『現地調査』。」をご参照。


その反省を活かし後日、築35年オーバーの我が家で、

『エアコン暖房』で、『暖房時間もじっくりとって』暖房した部屋のサーモグライフィ調査をしてみました^^!


【条件】
・エアコン暖房設定24℃で約10時間連続暖房。→サーモ調査

・中気密中断熱の客間と、低気密低断熱の寝室の2箇所で調査。
 (客間と寝室で断熱気密性が異なるのは、客間は中越沖地震後にリフォームしたため)

・調査日時は12/24の18:30頃。
 (クリスマスイブの夜になにしてるんだか(^^;))


あまり部屋が片付いていないので、実際の写真とサーモ写真の並列表示ではなく、サーモ写真中心です(^^;)


サーモ画像の温度バーの色設定はS邸のときと同様で

 青・・・不快温度(18℃以下)
 黄色・・・問題ない快適温度(23℃ほど)
 赤・・・暖かい温度(それ以上)

として表示されるよう温度バーの最高温度と最低温度を画像ごとに設定しました。
 →詳細はS邸リノベーション。18「サーモグラフィ調査②『現地調査』。」


【客間】

客間は現在、ベビールームとして使っており、24h暖房をしています。
通常はエアコン20℃設定で、室温およそ20℃で維持しています。
(今回は調査のため、エアコン24℃設定で暖房後のサーモ画像です。)

室温は22.4℃(床から高さ1m地点。)

室内の様子。
床温(スポット3)は22℃と出ているが、放射温度計で測ると20℃ほど。(誤差2℃ほど)
サーモ画像に誤差があることに注意。→注意点
足元が20℃あればとりあえず寒くはない。(体感上も不快ではない)

天井温度は、誤差2℃を考慮すると22℃ほど。

興味深いのが、通常壁より天井のほうが暖まるのだが、調査結果を見ると逆だった。
これは、天井の内部が非暖房空間(隣接する玄関など)につながっているため冷えるからだと思われる。
(客間は1階で直上の2階の寝室も24℃設定でエアコン暖房していた。)

誤差を考慮しても壁は20℃以上あり問題ないが、壁下部(スポット1)と壁上部(スポット2)で温度差が7℃もあった。
実際の体感でも足はいいが体上半身が暑く感じた。「設定温度下げたい」と思うほど。
上半身の体感温度は26℃以上だったかもしれない。→温度差による不快感。

この温度をもう少し減らせればさらに快適な温熱空間になる。
(→さらなる高気密高断熱化、または空調方式の変更※床下暖房など)

ドアの下を放射温度計で測ってみる。(ドアの裏はほぼ外気温に近くなる無暖房の玄関ホール)
(サーモ画像の誤差が4℃ほどあった。)

床温が13℃だとすると足元が冷えてとても不快。
(スリッパ履きのためそこまで感じないが)
ドアの下の隙間が温度を冷やす大きな原因となっている。
(ただし、あくまで限定的な範囲だけなので問題は大きくない。)

床とは異なり、無暖房の玄関ホールと接している壁は23℃ほどで快適温。
→無暖房の部屋と隣接していても気密性があれば冷えは伝わりづらい(表面温度は快適温度を保てる)ことがわかる。

床の様子。
なにもない部分(スポット1)とテーブルの下(スポット2)で3℃ほどの温度差がついている。これは空調があたりづらいせいもあるが、テーブルの前に掃き出し窓がある影響が大きい。

また、布団の下がとても冷えている。これは布団が断熱材の役目を果たし、暖房が床に届きづらいため。ふとんの下が湿っぽくなりやすいのはそのせい(結露)。

テーブル前の掃き出し窓の下部。
サッシ下端は12.4℃ほど。(サーモ画像の誤差はほぼ無し)
室温22℃、湿度40%が結露し始める温度は約9℃ほどのため、12℃あれば結露はしない。
ドレープカーテンの下の隙間から暖気が伝わりサッシを暖めるため結露しない温度までサッシが暖められている。
(そのかわり冷気が室内に伝わる。結露防止と断熱はこのあたりが裏腹)


【客間まとめ】

温度ムラはあれど、エアコン暖房であれば一番冷えやすい床温を快適温度まで上げることはできる。
→快適な空間はある程度つくれる。

※注意なのは「不快感」と「熱損失の大きさ(暖房費の多さ)」は別の話ということ。
この部屋は不快感はまあまあ少ないが熱損失は大きい。



【寝室】

寝室も客間同様エアコン設定温度24度で約10時間連続暖房。
客間と違うのは低気密低断熱であること。

寝室のサッシはアルミ枠のため客間サッシ(樹脂アルミ複合枠)よりも表面温度は低い。
(温度差以上に熱ロスは大きい!)
室温23℃、湿度43%だと、結露する温度は11℃ほど。(結露していた。)


床温は約20℃。(サーモ画像の誤差ほぼ無し)
低断熱低気密の部屋でもエアコン暖房であれば床を快適温まで上げることはできる。

天井温は23.6℃ほど(サーモ画像の誤差4℃ほど)
1階の客間の天井温約22℃ほどよりも高い。
これは2階の天井には断熱材が(薄いが)入っているから。
(客間の天井にはなにもなく無暖房の玄関とつながっている。)

しかし!色でごまかされそうになるがよく見てみると、スポット1とスポット2で温度差が3℃もある。

わかりやすくするため温度バーの色設定を変えてみると、、

これを見るとぎょっとする。これがサーモ画像マジック(要注意)。
温度差は上の画像と全く同じ。色設定だけ変わっている。

これを見るとわかるが、天井の青色になっている部分は断熱材が密実に入っていないところ。
天井の隅はまだわかる。(すぐ上は寄棟屋根。隅は断熱材が入れづらい。)
しかし、スポット2の測定点の部分は明らかに断熱材がずれている(施工が悪い)。

我が家は築35年ほどだが、30年以上前は断熱施工の重要性はまだまだ認識が低かった。
体感ではそこまで差はないが、熱ロスはある。
そして、天井ならまだしも、壁内の断熱材がずれている場合、断熱材が入っていないところが結露して柱が濡れてカビやシロアリを呼んでしまうリスクがある。

築年数の経った中古住宅購入の失敗はこういうところが怖い。
壁の中の結露は誰もきづかない。気づかずに購入してしまう。
そういったことがないように中古住宅は購入する前に断熱リノベーションも検討すること。

天井裏の断熱材のずれは来春以降に確認してみようと思う。

多少誤差はあるが、床から天井までいずれも20℃以上あり快適温。
(寝室を見る限り壁の断熱欠損はなさそうだった。)

カーテンを開けて窓の温度を見てみる。(ガラス面なので正確に測定できていない可能性あり。)
カーテン部と比べ、おおむね7℃ほど差があった。
言うまでもないが、窓にカーテンをかけることで、窓からの寒気(放射)を緩和することができる。


隣の部屋(無暖房)とは引き戸でつながっている。
どれだけ断熱できているかを探った。(サーモ画像の誤差は2℃ほど)

戸の裏表温を比較してみる。(写真は無暖房室側から)
暖房室戸温23℃に対し、無暖房室戸温18℃(差:約5℃)

戸を開けてみる。
暖房室床温21.9℃に対し、無暖房室床温16.8℃(差:約5℃)

壁も比べてみる。
暖房室壁温24.7℃に対し、その背面は、、

無暖房室壁温17℃ほど(差:約7℃)

誰もが経験上知っている話だが、
断熱材が入っていない壁や戸であっても気密性がそれなりにあれば(暖房空気が流れなければ)それなりに部屋同士を断熱区画することはできる。

逆に、この2つの部屋をつなぐ戸が開いていたら、温まりが悪いだろうことは容易に想像がつく。

これは、断熱性も大切だが、快適性においては「気密性」がもたらす影響のほうが大きいということ。

断熱と気密はよく同列で語られるが、まずは気密性が大切
(気密性を示す数値C=1.0以下にはしたい)



【まとめ】

・低気密低断熱の部屋でもエアコン暖房を(連続で)すれば、(ある程度ではあるが)室を快適温に維持することはできる。

※熱のロスの大小は別問題。断熱性が低ければその分光熱費はかかる。

これは意外と重要なことで、新築ではなく中古リノベーションする際の判断基準のひとつになる。

ある程度の断熱気密性があれば快適な空間は空調でなんとかできる。

あとは、光熱費の問題(何年住み続けるか、電気代が今後上がると考えるか)を考えて、断熱リノベーションしたほうがよいか、しないほうが金銭的なメリットが大きいかを比較し、判断する。

ある程度室を区切って24h連続運転で使用すれば、低断熱低気密の家であっても、快適過ごすことはできる。

あったかいリビングから寒い浴室に移動した際に起きるヒートショックによる心筋梗塞などを起こさないよう空調の使い方は考えていきたい。



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【その他(おまけ)】

浴室(入浴直後)
床温は16.4℃(サーモ画像の誤差2℃弱)
はだしで触るとヒヤッとして不快な温度。ユニットバスの裏は床下(外気)に断熱材なく接しているため。

ちなみに現在の事務所で採用している床下エアコンを使った住宅の浴室床温は22-24℃ほど。
あったかくてとても快適。
床も乾きやすいのでカビ防止にもなる。
浴室の快適性は、家の中でも重要度は大きい。
せっかく新築を建てるのであれば、そういったことまで考えられた断熱計画、空調計画を求めたい。

トイレ(無暖房)。
床の隅の温度は約11℃。(計測していないが室温も同様だろう。)
温水便座が放熱しているのがとてもわかりやすい。

サッシ枠は約8℃。当然結露している。(浴室からの湿気あり)

キッチン(暖房空間)。
勝手口ドアの下は10℃以下まで冷えている。結露もする。
調理中は動いていたりコンロの熱を感じたりして上体は温かいが、特に冷え性の人は足元が不快に感じる人も多いと思う。(義母もそう)
不必要にキッチンの窓を大きくすると、快適性に影響を与えることに注意。

外気温ほどまで下がる玄関ホール(無暖房)





以上が昨年末に行ったサーモグラフィ調査でした^^

少し荒めの調査ではありますが、ニュアンスが伝わればと思います。

これから建てられる新築やリノベーションの参考になれば幸いです。

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