S邸のサーモグラフィ調査の続きです。
いよいよ現地調査の報告です^^
この日は午後から晴れ間が差し出し調査日和となりました♪
※サーモ画像を見る際には注意が必要です。まずは注意点をお読みください。
→S邸リノベーション。17「サーモグラフィ調査①『注意点』。」
さてS邸のサーモ調査ですが、『目的』はなにかというと、
・断熱リノベーションしないで住む場合、室内がどのような温まり方になるかを示す。
・断熱材の欠損などがないかを調査する。
といったところです。
ただ最初に告白しておきますが、今回あまり有益な報告にはならないかもしれません(^^;)
前提条件と合わせてお伝えすると、
・外気温:約6℃(15時:7℃~17時:5℃)※2017.12.23新潟市
・無暖房状態から、石油ストーブで30分間暖房し、室温を16℃程まで上げた。
(その状態のサーモ画像。)
「有益な報告にならないかも」と言った理由は、
・暖房時間が短い。
本当は、1~2日暖房したあとに測るのが理想的。
(そうしないと壁や床や天井の表面温度が安定しない。)
・暖房器具が石油ストーブである。
石油ストーブは高温を吹き出すため、どうしても部屋の上部が暖まりやすく床面が温まりづらい。
S邸は現在電気契約を止めているためしかたのないことで、
僕はこの日、車にダルマストーブを積み、そのストーブで暖房したのでした(^^;)
(ダルマストーブ:乾電池で動く石油ストーブ)
二人乗りの双太郎の助手席にダルマストーブが乗っている様子はさぞおかしかったと思います笑
................
さてさて、以上が前提条件でした。
それでは具体的な報告です。
※簡単にですがS邸のリビングの現状はこんな感じです。
(インスペクション時に撮影)
【暖房前】
室内の表面温度はおおむね8℃ほどと表示されている。
放射温度計では4.8℃。サーモ画像に3℃ほどの誤差あり。→注意点
リビング床温は5℃ほど。(多少日射あり)
和室(畳下に断熱材なし)の床はリビング(断熱材あり)より低く、3.4℃。
外気と土間コンクリートで接している(室内と外の境に断熱材が入っていない)玄関床は3.1℃。
玄関は断熱施工がしづらく家の中で一番冷えやすいところ。
ここをどう断熱改修するかが断熱リノベーションのポイントのひとつ。
ここから30分石油ストーブで暖房した。
【暖房後】
評価の前にもうひとつ前提条件の説明を。
温度バー(サーモ画像の右端にある温度と表示色の関係を示したバー。上の画像では最高32℃~最低14℃)の温度は変えることができます。
これを固定(すべて同じ最高温度~最低温度)してそれぞれのサーモ画像を比較するのもひとつの方法ですが、今回はパッと見での分かりやすさを優先するため、
青・・・不快温度。
黄色・・・問題ない快適温度。
赤・・・暖かい温度。
として表示されるよう温度バーの最高温度と最低温度を画像ごとに設定しました。
具体的には、
表面温度18℃を水色に →水色より青いと体感で寒い(不快)
表面温度23℃を黄色に →問題なし
なるように温度バーの最高温と最低温を設定しています。
なので、詳細な温度数値を見なくてもなんとなく感覚的に
「ここが不快そうだなー。」「ここは問題なさそうだなー。」
と読めるようにしました。
ではでは話を戻して、
リビング(東面)のサーモ画像。
(エアコンはついていない。樹脂のため表面温度が他より高くなっている。)
天井(スポット4):26℃
壁上部(スポット1):23℃
壁下部(スポット2):18℃
床隅(スポット3):14.4℃
・上下温度差が10℃以上あること。
・足元が14℃ほどであること。
より「不快」な状態であることがわかる。
この家に断熱リノベーションせず住んだ場合、日中暖房せずに、帰宅後石油ストーブをつけた30分後はこのような状態だということ。
築20年以上で石油ストーブをメインで使用している家はこういう状態の家が多いと思われる。
石油ストーブ(水分を出す)のため湿度も高まりサッシに結露が始まる。
放射温度計でも測ったがサーモ画像と大きな誤差はなかった。
(こういう誤差があったり合ってたりするバラツキが格安サーモカメラのやっかいなところ、、)
一番冷たくなるサッシ(アルミ)の下枠は9.9℃。
室内16℃、72%のとき、結露が始まる温度(露天温度)は約11℃ほど。
サッシが11℃より冷たいため、枠に結露が起きる。
結露自体を極端に恐れる必要はないが、結露が極端に進むとカビの発生につながる。
そして一番怖いのは、目に見えない壁の内部が結露すること。
壁内が結露し続けると、柱の腐朽やシロアリ被害につながる。
(古い家は気密性が低いため、換気が進み、図らずも壁内が結露しづらい場合がある。一番危ういのは中途半端な知識と施工で建てられた中気密の家。)
リビングの掃き出し窓。
掃き出し窓の下部は他の部分より冷えることがわかる。
(付近の床まで冷えが伝わっている)
(画像右下の床が赤いのはストーブがあるため)
ストーブから遠いキッチン奥の床隅は結露が起きそうなほど冷えている。
(スポット3:12℃)
................
【2階個室】
現状はこんな感じ。
インスペクションをしてもらったアズ建築事務所の佐藤さん。
こちらも30分かけて石油ストーブで暖房した。
(運んだり寒い中待ったり、一人で大変だったなー(><)!)
壁下部(スポット2):18℃
床隅(スポット1):12.3℃
おおむねリビングと同様の結果。
(「不快」な状態であることがわかる。)
押入れ側(北西面)。
天井(スポット4):28℃
壁上部(スポット1):23℃壁下部(スポット2):18℃
床隅(スポット3):16℃
色を見ての通りだが、
石油ストーブでは、天井ばかり暖まり床が暖まらないことがわかる。
足元が(頭より)暖かいことが快適に感じる条件なのに真逆の状態。
石油ストーブは火力が高く即効性があるが、快適性から言うと△。
ここに石油ストーブの暖房としての限界を感じる。
ガスストーブでもそうだが、火力が強いとどうしても上下で温度ムラがおきやすい。
快適性を考えると、やはり
『高断熱高気密+エアコン暖房(24時間)』が理想だろう。
エアコンは吹き出し温40℃前後で、空気と一緒に壁や床などを暖める。
壁や床などが暖かくなると、放射熱により人間は暖かく感じる。
※人間の体感温度は「空気の温度」と「壁などからの放射温度」をそれぞれ同量程度感じている。
そのため、空気温がいくら高くても壁などの放射温が低ければ不快さを感じる。
(空調された車内がいまいち快適でないのは放射温の影響。暖房空気が暖かくてもボディやガラスなどが冷たいと不快に感じる。冷房も同様。)
エアコンにより、空気と共に壁などの内装材も快適温(22~24℃)で維持されていると、人間はとても快適に感じる。
................
今回の結果としては(測定条件がいまひとつな感じはありますが)、
断熱リノベーションしないで住む場合、室内がどのような温まり方になるかは示せたと思います。(ある程度)
また、リビングと個室を調査したところ、大きな断熱材の欠損も見当たりませんでした。
(調査範囲が狭いのでなんとも言えない。)
こういったサーモグラフィ調査が中古住宅の購入の際の情報のひとつになれば理想的なのですが(リノベーションなしでそのまま住むことを想定する場合)、
実際は、屋外と室内で温度差をつけないと調査できないので、なかなか条件は厳しいです。
調査にそれなりの費用もかかるため、現実的には中古購入前にこうした調査をすることは難しいです。(当面は)
そうなるとやはり、『断熱リノベーションをする』ことを前提とした中古住宅探しが良いのかもしれませんね。
さて、今回の調査で、
『暖房器具が石油ストーブである。』ことが、調査条件をいまいちなものにしていました。
その反省を活かし後日、築35年オーバーの我が家で、
エアコン暖房で、暖房時間もじっくりとって暖房した部屋のサーモグライフィ調査をしてみました^^!
その報告はまた次回に♪
おまけ................
【玄関ホール】
※注意!
「青・・・寒い。赤・・・暖かい」の温度バー設定ではありません。
温度差を色で伝えやすいよう、温度バーの温度間隔を狭くして極端に色の差を出しています。
赤=暖かい(快適)ではないことに注意。
赤(スポット3:10.7℃)、青(スポット2:8.7℃)で色から受ける印象ほどの温度差はない(差2℃)。
なにが伝えたかったかというと、
「梁が入っている部分の壁(スポット2)」と「梁がない部分の壁(スポット1)」に温度差が見られるということ。
これがいわゆる『熱橋』でサーモカメラを使うと断熱性が低いところを可視化することができる。
(※ただし、実際の温度差は0.6℃ほどで問題になるほどのものではありません。)
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