ゆうです^^
先日、スペシャルな実験に参加してきました。
それは、耐力壁を壊しきるというもの!
地震から家を守る耐力壁はどのようにして壊れていくのか?
なにを意識して設計を行うべきなのか?
カタログ上の数値と実際の強さの差は?
ウッドハブさん、タツミさん、住学の連携により、最高の体験を得ることができました^^
今回は、住学の真価を強く感じました!
耐力壁の実験を行うには数十万円もの費用がかかるそう、
住学構造部主宰のウッドハブさんと、材木プレカット+金物メーカーであるタツミさんのつながりによりそれが実現しました^^
個人では出来ないことが出来るのは集団の力ですね。
皆さま、大変ありがとうございました!
株式会社タツミ | 株式会社タツミは地震に強い「木の家」をつくる 接合金具のパイオニアです。 WOOD HUB
【構造】住学構造部スタート!01「本物の学校で授業!」。
住学メンバーがタツミさん本社に集合♪
今回は貴重な体験のため参加率も高め!
まずは住学構造部部長のウッドハブ實成さんによる実験内容の説明。
タツミさんの社員の方々も大勢ご協力頂きました!
ありがとうございました!
さて、実験は
耐力壁(「筋交い」と呼ばれるつっかえ棒のようなもの)に、横から力(地震力)を加えたときに耐力壁がどのように変化するのかを知る
というもの。
注目ポイントは、
・加えた力を抜くと元に戻るか
→元に戻れば耐力壁の損傷はないということ。
(次回の地震時にも力を発揮する)
・実際にどれほど強いのか
→構造計算で使われる数値との差。安全率の程度を知る。
・最後の壊れ方はどのようになるのか
→どこがどう壊れるのか。木造の勘所を知る。
こういった点は参考書を見ているだけではイメージしづらいもの。
実際に目の前で実験を見られるのは本当に貴重でした!
おぉー!すごい!
感動です^^
実物大の筋交い(斜め材)。
実際の住宅でもこのように設置される。
土台の両サイドに柱が立ち、間に筋交いが斜めに入る。
筋交いは専用の「筋交い金物」で柱に固定される。
筋交い金物には多くの種類があり、それぞれの金物によって挙動が異なることにも注意。
梁(横材)の脇についている加力機により徐々に力を与えていく。
(押したり引いたり)
(他には「柱+土台両付け型」がある)
実験前の筋交いは、柱と土台にピッタリとくっついている。
柱は引き寄せ金物で強固に固定される。
(35kN相当品)
筋交いの中央部は「間柱(細い下地用の柱)」にクギ2本で固定される。
................
準備が整い、実験スタート!
筋交いには、伸びる(引張)方向に力がかかる。
要所で實成部長の解説が入り、とても分かりやすかったです^^
(裏側から撮影)
知識としては知っていましたが、目の前で見るとインパクトが大きい!
地震時はこういう動きをしているですね。
まさに、百聞は一見にしかず!
(木材についた線との差より)
「上下のズレ長さ(変位)」と「与えた力」を測定していく。
まずは、構造計算で想定しているズレ長さまで梁を押していきます。
変形角で言うと1/120rad。
(今回の試験体の高さが2.73mなので、1/120rad時の上下のズレ長さは約2.3cm)
その時に、筋交い(45×90)は「約270kgで押しても大丈夫」というルールの下、構造計算が行われている。
(筋交い引張時)
実際はどうだったのでしょうか?
実験では、約350kgで押しても大丈夫でした^^
(1/120rad時に約350kg)
つまり、ルールよりも実際は、350/270=約1.3倍強かった。
余力がそれだけあるということが分かりました^^
(圧縮時も同様だった)
(ルールでは440kgのところ、600kgまでいけた。→600/440=約1.3倍)
また、押した力を抜いてみると、およそ元通りの位置まで戻りました。
=「耐力壁に損傷がない」ということ。
=「耐力壁が繰り返し使える」ということ。
構造計算で使用する耐力壁の強度内であれば、耐力壁はほぼ損傷せず、繰り返し使えるということが分かりました^^
専門的に言うと「弾性」範囲内であるということ。
(弾性=「力を加えると変形するが、力を取り除くと変形も無くなる(元の状態に戻る)」という性質)
熊本地震のような繰り返し起こる地震に耐えることを想定する場合、この「弾性範囲内」での耐震性を上げる(=耐力壁を増やす=耐震等級を上げる)ことがひとつのポイントになります。
【秘訣】構造計算された家を。「耐震等級3」を勧める理由。
構造計算で扱っている強さよりも実際の強さは余力があることが分かりました^^
そして、その範囲内であれば、元に戻る(繰り返し使える)ことが分かりました。
ではでは、お待ちかねの最後はどう壊れるのか?
少年心がうずきます♪
(梁を奥に押している)
圧縮は引張よりも1.6倍以上の耐力がある。
ただし、適切に筋交いを押さえないと「座屈」を起こしてしまう。
(写真赤丸のように、面外にたわんでしまう)
座屈により「筋交いが間柱から離れてしまっている」様子が分かる。
(当該部のクギの留め方もポイントになる)
徐々に筋交いが土台と離れていきます。
バキ!!
筋交いが割裂しました!
よく見ると、筋交いに打たれたビスを基点にして割れている様子が伺える。
金物もここまでズレていた。
筋交い破壊時(引張)にかかった力は約800kg。
構造計算で使う耐力(引張)270kgの約3倍でした。
横力により土台に柱がめり込んだ様子(破壊時)。
構造計算ではめり込みに対する検定も行われる。
破壊の瞬間の動画です。
破壊時の金物の様子。
興味深いのは「金物・ビスの変形・損傷は少ない」こと。
金物が先に壊れないよう、金物の強度は木の耐力より強くなっている。
(剛性が高い。その良し悪しは下記に記載)
→木の材質の良し悪しで耐力が決まるということ。
壊れた筋交いをよく見ると、ビスが打たれたところから割裂しているのが分かった。
筋交い(木)は引っ張られ回転するがビスは回転しないため 、ビスにより、木を中心から外側へ裂くような力が発生したように見受けられた。
ビス穴が広がっている(木部にめり込んでいる)様子も見て取れた。
今回使用された筋交いは綺麗な節無しのものだったが、実際に建築現場で使われる筋交いは節があるものも多い。
(無節材は高価なため)
また、節も「問題がない節」と「問題がある節」がある。
ざっくり言えば、この割裂した線上(+ビス付近)に節があるものは危うい。
(耐力が著しく低下するリスクがある)
エスネルデザインでは、筋交いをあまり採用していない(耐力壁は面材がほとんど)が、よく使用していた前職時は、筋交いの節の工事監理は慎重に行っていた。
(家中の全ての筋交いの節の具合を監理するのはとても大変。)
(節の監理は一般的にはほぼ行われないと思われる)
筋交いを採用する場合は、金物選定や施工の確認と共に「節の監理」が非常に大切なポイントになる。
今回の実験を経て、工事監理の重要性を再認識しました。
設計事務所の仕事『第三者による工事監理「工事監理報告書」作成。』
【網川原のエスネル‐11】配筋工事監理!「第三者監理の重要性」
筋交いの実験は金物を換えてもう一度行われました。
「ブレスターZ600」という異型の筋交い金物。
先ほどの金物と異なる「柱+土台両取り付け型」。
木造筋交い用接合金物なら【ブレスターZ 600】 | 岡部株式会社
高い初期剛性と高い「粘り・靭性」が大きな特徴。
(画像はメーカーHPより)
同様に実験開始。
先ほどの金物では筋交いが割裂した力を与えても、割裂は起こらず、まだまだ余裕があった。
(かなりの力を与えても筋交いの破壊まで至らなかった)
ポイントは、「金物が変形」し、筋交いへの負担を肩代わりしている点。
金物の粘りにより、筋交いのビス部に力が集中することを避け、力を木と金物に分散することで、筋交いの割裂を防止している。
興味があればブレスターの動画が面白いです^^
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今回の実験で、
・筋交いの強さ、余力、弾性。
・筋交いの壊れ方
・金物の選定、筋交い材(節の監理)の重要性
などとても勉強させて頂きました。
そして、最も重要なことは
「設計者が何が肝心なのかを知っていること」
なのだと再認識できました。
ただ単に、節を嫌ったり、弱い金物を嫌ったり、筋交いそのものを嫌うのではなく、
「こういった破壊をするから、このあたりのこの節は危険だろう。→交換」
「このあたりの節で、サイズもこの程度であれば問題ないだろう。」
「剛性だけでなく、靭性も考慮したいからこの金物を選ぼう。」
「そもそも地震時の損傷(変位)が少ないように耐震等級を上げておこう。」
など、「理由(目的)」を持って設計することが大切ですね。
自分の中に「根拠」を持つために、実験を目の前でみることは非常に有効でした。
タツミさん、ウッドハブさん、皆さま本当にありがとうございました。
今後の設計に活かさせて頂きます。
今度とも何卒宜しくお願い致します!
-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-
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エスネルデザイン代表
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ネイティブディメンションズの鈴木さんもこの日の実験についてブログを書かれています^^
住まいの学校の放課後部活動 - native dimensions blog
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